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第9回 コンシェルジュサービスに魂を

2017.12.02

Norio Kuriyama

アイミツのサービスを立ち上げたときは、発注業者を価格や実績などで比較できるUIを前面に出して、サイトをローンチしました。当時のインタビューでも「B2B版の価格.com」を目指すと説明しております。その後、順調に利用ユーザー数が伸びていく中で、いくら業者情報を充実させても、自分で業者を比較検討するためにどのような切り口で比較すればよいのかが分からない、という課題を持っているお客様が多いことに気が付きました。

 

「アイミツコンシェルジュ」というコンセプト、すなわち、発注者と受注者の間に人を介して、ベストなマッチングを図る試みはそうした最中、サービス改善の一環で誕生したものです。以来、現時点(2017年末)までに5万社近いお見積もりの相談を、弊社ユニラボのスタッフがこなしてきたことになります。しかしながら、導入当時は、100以上あるあらゆるカテゴリーのスペシャリストをどう育成すればよいのか、当然ながらかかる人件費も小さくないことなど、懸念点も多かったのです。マッチングサービスという側面から、しっかりお客様の発注ニーズを理解しなければ始まらないということで、その導入を決意しましたが、それには何日か時間がかかったことも覚えています。紆余曲折はありながらも、何年かを経て、「あなたの発注コンシェルジュ」というサービスコンセプトが皆の中にフィットするまで定着しました。

※開始当初のTOPページと、コンシェルジュサービスを導入したときのTOPページ

 

一方、コンシェルジュサービスが当たり前になる中で、それがある種の惰性になり、日々の応対としてのオペレーションの1つに過ぎなくなっていることに、私はしばしば社内で警笛を鳴らしてきました。社内では朝10時になるとすぐに、フリーダイヤルから問い合わせが入り、前日の夜間にいただいた問い合わせの一斉荷電対応から始まるのですが、毎日同じことを繰り返しているようで、お客様の要望や課題感、温度感は千差万別なのです。「コンシェルジュ」と「コールセンター」は紙一重の違いではなく、まったく性質を異にするものと思って向き合っていたのですが、慣れとは怖いもので、私自身も日々のオペレーションをこなすこと自体にやりがいを感じるようになっていきました。

 

そんな日々の連続の中で、「初心忘るべからず」ということで、サービス提供者として、1人ひとりのお客様に尽くしていくことを忘れないように、コンシェルジュサービスに「魂を込めること」を、来年1年間のスローガンとして、私自身のコミットメントとして、社員の皆にも誓っているところです。

 

 

2009年頃、DeNAでECプラットフォームの事業責任者だった私は、初めてザッポスという米国のサービスを知りました。以来、ザッポスの「Wow!!」が生み出している数多くのサービスを研究し、アイミツの立ち上げ当時の2014年頃にもこんな会社にしたいものだと意気込んでいましたが、そう簡単に真似できることではないだろうこの強烈な文化が、いつしか単なる夢や憧れに変わり、存在として遠のいていきました。

 

ザッポスは靴を中心とするECサイトを運営していますが、売り物はモノである「靴」ではなく、「サービス」と位置付けており、狂ったようなぶっとんだカスタマーサービスの逸話はここで紹介する必要のないくらい有名です。もし仮に顧客が求めている靴がザッポスになかった場合に、必ず他社のサイトを最低3個はチェックして、その靴を入手できるところがないかどうか調べるように教育されていると聞いたときには、相当驚いたことを覚えています。「サービス」をコストと考えず、顧客ロイヤリティを築くためのマーケティングとして投資することで、サービスそのものを差別的優位性の源泉となるコア・コンピタンスに育て上げたのでしょう。社内に根付いていると言われていますが、1回の顧客対応(コール)につき、幸せを1つ届けるという発想がとても素敵です。

 

※社内に置いてある数々のザッポス書籍たち

 

アイミツの創業期にも、社員メンバーには、まず最初にザッポスの書籍を読んでもらうなど、常にその存在は頭の片隅にありました。これからも弊社スタッフには勉強してもらいたいと思っていますが、それよりも、まず「自社なりのアイミツのサービス哲学」を創り上げなければならないと、今は痛感している次第です。

 

私たちは、見積もり取得における煩わしさを解消し、圧倒的に便利と称されるサービスを目指していますが、実は、提供する見積もりに対する納得感も当然さることながら、そのプロセスを請け負ったコンシェルジュに抱く感情こそが、体験となり、記憶になるのだと思います。ザッポスが、PECと呼ばれる「パーソナルかつエモーショナルなつながり」を大切にし、顧客との生涯における関係構築を目指しているのもそのためです。同様に、「私たちのコンシェルジュはお客様の課題に心底向き合い、寄り添うことができているだろうか」「今、お客様が置かれている状況に想像力を働かせ、何か1つでも課題を解決しようという姿勢を持っているだろうか」――こうした問いは常に忘れてはならないことです。

 

お客様との信頼関係づくりに真剣に向き合い、時間や手間(すなわちコスト)を惜しまず、際限なくやりきる姿勢を、アイミツコンシェルジュのバリュー(存在価値)としたならば、その頂(いただき)には到底及ばないのが現実です。だからこそ、我々は定期的に初心に返り、お客様に提供するサービスそのものを見直す必要があるのだと思います。そのためにサービスを開始したあの日、(2014年)2月19日を毎年、「コンシェルジュの日」と命名し、毎年、全社員でそのサービスクオリティに妥協はないかを議論し合い、昨年よりも今年、今年よりも来年へと、進化し続けていることを確認するというのを、弊社の伝統行事として育てていこうと考えています。

 

 

ザッポスの書籍によれば、顧客がWow!!と感動するのは、次のどちらかの条件が満たされたときだと説明しています。

① サービスが「期待」を上回ったとき
② 心が通い合ったと感じたとき

 

その上で、サービス提供者として「やるべきことをきちんとやる(まさに凡事徹底の精神)」を根底から見直すこと、そして、サービスの基本とも言うべき思想ですが、「顧客に手間を取らせない」というこの2つを徹底して追求し続けるプロセスこそが、アイミツというサービスの魂であり、哲学を紡ぎ出す心髄ではないかと私は考えています。最初から完璧な形を決めて目指すのではなく、追求し続ける姿勢こそが肝心なことではないでしょうか。

 

モノやサービスにあふれたこのご時勢、毎年新たなサービスが誕生し、そして消えていきます。その中で、記憶に残る体験を提供してくれる事業者はごく一部です。星野リゾートであれ、スターバックスであれ、そうした事業者はやはり現在のセンシティブなユーザーの1人ひとりの心を捉えることを積み重ねて、多くのファンを創り、唯一無二のサービスに育てたのでしょう。

 

「期待を上回るサービス」、いわゆるUX(User Experience)の研究を徹底してやり抜くため、弊社でもようやく、「専門のプロジェクトチーム」を立ち上げることとなりました。コンシェルジュを中心として、デザイナー、エンジニア、セールスの精鋭を結集し、アイミツのサービス哲学を根底から見直すのです。このゆとりを持つに至るまでに3年もの月日がかかりました(創業期のため余裕がなく、リソースを充てる覚悟が持てなかったという意味で)。

 

アイミツではかなり早いタイミングから、NPS(ネット・プロモーター・スコア)を導入しています。「あなたはこのサービスを親しい友人や家族にどの程度すすめたいと思いますか?」を0点~10点で評価してもらうのです。お客様の感情に向き合い、またアイミツを利用したいと思うような、心のこもったサービスにしていくためにまず通らなければならないのが、NPSを最高ランクに磨き込むことだと考えています。

 

2018年は、どうしたらお客様に心からご満足いただけるのか、を徹底して考え抜く1年にしたいと考えています。弊社のミッションである「すべては便利のために」を、2018年バージョンにしたものがこちらです。

 

 

※2018年改訂版ミッション「すべては便利のために」

 

 

終わりになりますが、ザッポスが従業員1,000人を超えても、驚愕の顧客サービスを提供し続けられるのは、その企業文化にこそあるとも言われています。10個のコア・バリューに中にある、「チーム・家族精神を育てよ(Build Positive Team and Family Spirit)」では、「同僚」という関係を超えるつながりを築くことを重んじています。だから働き甲斐のある会社であり続けられるのでしょう。ユニラボの「コンパス」で言うところの、「全力信頼」や「チーム主義」に該当します。

 

コンシェルジュを担当するスタッフに限らず、全社員、全スタッフが、顧客対応について悩み、考え抜き、成功を共有することで、一歩でも理想のサービス像に近づいていくことを期待していますし、一方、それがスムーズに進むような風通しの良い企業文化を創っていくことも、約束したいと思います。